2014年デザインコンペ 審査講評

全体講評

札幌市では、本年7/22~8/25まで「ますます商店デザインコンペ」を実施したところ、5つのテーマに対して全40提案の応募をいただきました。9/3に審査委員会(審査委員についてはこちら)を実施し、厳正に審査した後、商品化・事業化に取り組む各障がい者施設と協議の上、優秀賞を選定しましたのでお知らせいたします。 

 

審査講評

 

テーマ1:パンになる絵本。~「森の四季」をテーマにした絵本(施設名:きぼうの森)

  • 優秀賞:該当無し
  • 応募提案数:4件(応募作品一覧はこちら
  • 講評:
    本テーマの趣旨は、「きぼうの森」がその施設名にも込めた「障がいがあっても人の価値はみな同じ。ひとりひとり(一本一本の木)が集まってきぼうの森となる。」というメッセージを背景に、今後の個性溢れるパン・お店づくりにつながる「森の四季」の世界観を絵本として表現することでした。
    応募された4つの提案は、独特の世界観や高いイラストレーションの技術を有し個々の作品としては素晴らしいものでしたが、「きぼうの森」のおもいや「森の四季」というテーマを十分に昇華させたものではなく、優秀賞の該当は無しという審査結果となりました。

 

 

テーマ2:野菜パンのお店。~パンの製造・販売店舗の設計およびデザイン(施設名:ひかり工房)

  • 優秀賞:Hikari Bakery Project-地産地消の店づくり(若林秀典さん/若林秀典建築設計事務所)
  • 応募提案数:25件 (優秀賞以外の応募作品一覧はこちら
  • 講評:
    立地・出店場所、予算等が定まっていない中での提案コンペで、約1ヶ月という短い期間にもかかわらず、25件という多くの応募提案がありました。
    応募提案には、「かたち・素材を大切にした案」と「販売促進・ブランディングを大切にした案」といった2つの傾向がありました。これらはどちらも重要な視点でありますが、本店舗は今後のひかり工房の企業イメージを決定するため、「販売促進・ブランディングを大切にした店舗づくり」に力点をおいた案を中心に選考を進めました。
    その上で、審査の視点としては、以下の点を重要視しました。
    ・「北海道の農業に貢献するようなパン工房になりたい」という思いがデザイン化されているか。
    ・店舗設計だけではなく、新店舗に関わるデザイン全般をトータルにデザインしているか。
    ・事業展開や限られた店舗スペースを有効に活用するプログラムの提案が明確か。
    ・安全性や衛生面における法的制約・基本的条件を配慮し、高い実現可能性を有しているか。
    上記の視点に基づき総合的に審査した結果、「Hikari Bakery Project-地産地消の店づくり」を優秀賞と選定いたしました。残念ながら選外となった作品の中にも実現可能な作品は多くありましたが、今回は施設側のイメージや想いを優先したことをご理解願います。
    優秀賞と選定された「Hikari Bakery Project-地産地消の店づくり」は、ブランディングしていきたいものを空間や視覚化していく姿勢や地産地消のコンセプトが明確でわかりやすく、店舗から小物に至るまで丁寧に検討されていることが高く評価されました。

 

 

テーマ3:磨かれた取っ手。~ユニバーサルデザインのヒノキ製ハンドル(施設名:工房ウッディートイズ)

  • 優秀賞:tetra handle(長谷川聡さん/札幌市立大学デザイン学部 長谷川研究室)
  • 応募提案数:4件 (優秀賞以外の応募作品一覧はこちら
  • 講評:
    丁寧な研磨作業によるヒノキの手触りの良さを身近な生活の中で感じることができるものとしてハンドル・取っ手をテーマとしました。審査にあたっては、施設の特徴的な研磨技術をクローズアップしたものであり、ユニバーサルな観点から誰もが使いやすく安全でかつそれ自体のデザインの独創性、市場性を評価しました。いずれの案も応募要件をクリアしたものでありましたが、総合的な審査の結果、「tetra handle」を優秀賞として選定しました。
    受賞提案は、ユニバーサルデザインからの検証は勿論ですが、形態や構造自体の斬新さ・美しさ・面白さが表現されており、差異、障害・能力の如何に関わらず、暮らしを楽しくするアートのような魅力を持っています。また、既存のドアハンドルのかわりに最小限の改良で使える可能性が高いため販売ターゲットの幅も広いことが想定されます。

 

 

テーマ4:木のアクセサリー。~ジュエリーのような木製装飾品のコレクション(施設名:札幌クローバー会)

  • 優秀賞:樹海 JUKAI collection(NPO法人札幌チャレンジド デザインプロジェクトチーム〔チームリーダー 佐藤美貴さん〕)
  • 応募提案数:6件 (優秀賞以外の応募作品一覧はこちら
  • 講評:
    本テーマでは、札幌クローバー会の高い寄木技術を活かしたこれまでにない独創的な木製装飾品のデザイン提案を求めました。応募された6件の提案はいずれも創造的で高いオリジナリティを有し、完成度の面からもすぐに商品化できそうな作品でしたが、コレクションとしてのコンセプトが明確なこと、多様な商品展開の可能性があること、寄木の技術力を活かす高いハードル設定となっていることを視点に審査した結果、「樹海 JUKAI collection」を優秀賞として選定いたしました。
    受賞提案は、「樹海」というコンセプト名と貝のモチーフのかたちがリンクしていてわかりやすく、ひとつひとつの製作方法も丁寧に検討されていることが高く評価されました。一方で、商品化するにあたっては、製作方法・コスト、単価設定や販売ターゲット・方法について、市場性を踏まえた検討が必要だという課題があげられました。

 

 

テーマ5:革の表面加工。~革の新しいテクスチャデザイン(施設名:アトリエポトス)

  • 優秀賞:該当無し
  • 応募提案:0件

 

 

※優秀賞の該当がなかった、テーマ1及びテーマ5については、今後の進め方について検討した上で、当ホームページ等でお知らせいたします。